放射温度計全般
- Q1:放射温度計の測定原理を教えてください。
- A1:あらゆる物体は、その物体の温度に応じた赤外線エネルギーを放射しています。 その物体から放射された赤外線エネルギーを測定することで温度を求めることが出来ます。 放射温度計は、物質から放射された赤外線エネルギーを光学レンズ等で集光し温度検出素子(サーモパイルなど)が 入射した赤外線エネルギー量に比例した信号へと変換され出力します。 出力された信号を、電気的変換や補正を行い温度表示させています。
- Q2:放射率って何ですか?
- A2:放射率(ε)は、物体からの熱放射(赤外線エネルギー)のしやすさを0~1で表したものです。 もっとも多く放射する物体の放射率は1で黒体と呼びます。 又、自らは全く放射せず周囲からの熱放射を完全に反射する物体の放射率は0で鏡面体と呼びます。 一般の物体の放射率は0と1の間にあり、同一物質でも表面が粗いと放射率は高くなります。
- Q3:測定物質の放射率が分かりません。放射率をどのように決定すればいいのですか?
- A3:1.接触式温度計との比較法
熱電対や抵抗体などの接触式温度計を用い、測定物質の表面温度を測定します。 次に放射率を1に設定した放射温度計で物質の表面温度を測定します。 接触式温度計の値と、放射温度計の値が同じになるまで放射温度計の 放射率を少しずつ変更します。両方の温度計の値が同じになったときの放射率が、測定物質の放射率となります。
2.黒体テープ使用法
あらかじめ放射率が分かっている黒体テープ(又はペイント)を測定物質に貼り付けます。 放射温度計の放射率を黒体テープの放射率(例0.94)に設定し、黒体テープ貼り付け部を測定します。
3.理科年表で物質の放射率を調べる
理科年表の物99(519)に記載されている『金属面の分光反射率』より特定の金属元素の反射率が求められます。 放射率は、『放射率=1-反射率』で成り立ちますので、
例えばアルミニウムの場合
①当社のIR-TAが測定している波長 7.5μm以上
②アルミニウムの8μ~10μの波長における反射率 97.9%~98.0% 大体98%
③放射率 = 1 - 0.98 = 0.02
となり、アルミニウムの放射率εは0.02となります。
年表上の表では純粋な金属での反射率ですが、酸化状態や表面粗さ不純物等様々な要因で その値は変化します。
IRシリーズの取扱説明書に『放射率の目安』が記載されておりますので、ご参考ください。
取扱説明書はこちらから閲覧可能です。 - Q4:ガラス越しの物質を測定できますか?
- A4:測定できる機種はございます。短波長タイプをご選定ください。サーモパイルの測定波長(波長7.5~14μm)ではガラスを透過せず、表面温度を測定することになります。
注意)ガラスの材質にフッ化バリウム(BaF2)を使用した場合には測定が可能になります。 - Q5:温度が正しく測定することが出来ません。
- A5:1.集光レンズが汚れていませんか?
集光レンズが汚れていると正しい温度計測が出来ないことがあります。点検・清掃または修理を行ってください。
2.放射温度計の放射率を設定していますか?
放射率を設定の上、再度測定を行ってください。
3.視野欠けが発生していませんか?
視野欠けがある場合、温度が低め(又は高め)に表示します。 測定距離(放射温度計と測定物質までの距離)における測定径が、 測定物質より小さいことを確認してください。
例)IR-TAの場合
例)IR-TEの場合
- Q6:放射温度計の点検方法はありますか?
- A6:簡易的な目盛チェック方法をご紹介します。
魔法瓶などの保温効果の高い容器に、細かく砕いた氷と水(出来れば純水)を加えます。 氷が解けない状態(安定状態)を確認した後に、氷水の表面温度を測定します。(視野欠けが発生しないように注意してください) この時、放射温度計の放射率を1.0に設定する事が必要です。 この状態での氷水の表面温度は、約0℃となりますので放射温度計の指示値を確認することで簡易的な目盛チェックが可能となります。 (但し、放射温度計の指示精度をご確認の上実施ください)